旧古賀銀行がある「佐賀市歴史民俗館」は目立たないところにある佐賀の目玉観光スポットなんです。
私がこの場所を見つけたのは佐賀に通い始めてどれくらい経ったころでしたかね、けっこう時間がかかったと思います。とにかく目立たないんですよこの場所。今回お邪魔した旧古賀銀行の洋館が建っているのは、佐賀市柳町というエリア。江戸時代のメインストリート「長崎街道」に沿って、明治から昭和初期までのレトロな建物が立ち並んでいる素敵なストリートなのです。
この通り付近に立ち並ぶ古い建物群は、佐賀市歴史民俗館として一般に公開されていたりテナントが入居していたりと「佐賀の目玉観光スポット」なんですよね。なのに存在を知るまでに結構な時間がかかったんです。まあ、そういうところが佐賀らしいのですが。おかげで平日は人も疎らで、ゆっくりと見学することができます。
そんな目玉なのに地味な佐賀市歴史民俗館、自動車を駐車場に止めて歩いて行くと最初に見えてくるのが今回お邪魔した「旧古賀銀行」の洋館です。駐車場は地元の人たちが止めていて、満車になってる事も多いので注意。観光客なんてほとんどいないのに、駐車場だけは一杯になっているという怪現象が起きます。今回もガラガラなのに駐車場が開いてないという悲劇に見舞われ、旧古賀銀行の裏に一台だけ止めるスペースがあったので助かりました。
どうですかこの立派な洋館、凄いでしょう。この洋館は九州5大銀行の一つに数えられた、古賀銀行の本店として建てられた建物。建築は1906年、現在の姿になったのは1916年(大正5年)のこと。
いくつか明治時代の建物を見てきて思うんですけど、このころの洋館って裏に回ると和風なんです。ほら、裏側は瓦屋根の和洋折衷。
少し引いてみるとタイル張りの立派な洋館に、白壁と瓦屋根がくっついたモダンな外観。いま見ても古臭いどころかハイカラでとってもオシャレ、このころの日本人がもつ美的感覚は最高にカッコいいと思う。
そのまま正面に向かって歩いて行くと、ちょうど建物の側面に位置する玄関。こういう写真を撮るときに最近思い始めたのが、ハイクラスモデルじゃなくてもいいから一眼カメラと広角レンズが欲しいという事。う~ん・・・ちょっと予算的に厳しいか。
佐賀ポータルの写真は全てコンパクトデジタルカメラ、オジサン世代が言うところのバカチョンカメラなのです。
側面の玄関は普通の利用者が使う入り口ではないんでしょうね、やたら豪華でしたし。銀行に訪れる普通のお客さんはこちら、街道側に2カ所ある入り口から入るようになってます。
銀行の利用者の気分になって中へ。一歩入ると中はちょっとした空間があって、左右に扉があります。
扉を開けて中に入ると・・・「うわぁ」と思わず声が出るような、シックなんだけど地味じゃない重厚で豪華な室内。目の前のカウンターが、銀行の受付カウンターなんでしょうね。この銀行を利用していた人は、店内に入るとこんな風に見えていたんでしょう。
今でもこんな銀行があったら、無駄に窓口を利用しそうです。それくらい素敵な内装。
カウンターの向こう側、今は浪漫座というカフェレストランになってますが、銀行業務を行なっていた事務所です。
大正時代のお客さん気分はここまでにして、中に入って洋館を見学していきます。奥へ進んで振り返ってみると高い吹き抜け天井に広々とした室内、ピアノの奥がはいってきた入り口です。
一階展示スペースの壁に貼られた江戸時代の城下町図。
長崎街道を中心に、佐賀城下町の事が書かれています。
そして展示スペースの中へ。
ものすごく細かいところまで描かれた版画です。松原神社の参道にあった料亭でしょうか、店の広告みたいです。部屋に飾っておきたくなるような広告チラシ、現代でもウケるんじゃないですかこういうの。
この薬屋さんは今でもありますよね、確か。すんごいレトロな建物が残ってるんですよ。
他にも何点か展示されてます。店名が入っているので見るだけで当時の様子を思い浮かべて楽しめます。
上をみると壁に長崎街道などの紹介パネルが掛けられていました。
そして近くにあった個室へ。一階の個室の中、ここは個別の商談などに使われていたんじゃないでしょうか。現在は古賀銀行関連の展示がされています。
展示の一部、出納帳や預金通帳があります。
古賀銀行の紹介ですね、設立からの概要が書かれています。
明治18年(1885年)設立、休業状態だった山形県にあった銀行を譲り受けて開業したんですね。明治31年(1898年)に佐賀銀行と改名、大正2年(1913年)に株式会社古賀銀行と改名。そして大正9年(1920年)の大恐慌から雲行きが怪しくなり大正15年(1926年)に休業。最後は昭和8年(1933年)に解散したそうです。新聞の切り抜きが生々しいですね。
「古賀銀行遂に解散閉鎖を決定 佐賀財界王者の誇り 今や一塲の夢と消ゆ」
一塲(いちじょう)と読み、一回の劇を表すようです。始まりを開塲、終わりを収塲。古賀銀行の顛末を劇に例えたんでしょう。
こちらは古賀銀行の社旗でしょうか、縁起がよさそう。
展示の点数こそ少ないものの、なかなか見ごたえのある展示でした。続いてレトロな階段を2階へと上がっていきます。
手すりのデザイン、細かいところまで凝ってます。
ドーンと開けた視界、綺麗な天井です。
2階の廊下から一階を見てみました。
そして見つけたこの部屋、頭取の部屋っぽいです。天井が特に豪華ですもん。旧古賀銀行の室内は全体的に豪華な造りですが、天井に特徴があるように感じます。
他に会議室っぽい部屋と簡単な展示スペースがありました。これだけの建物なのに、一階のカフェと2階にあるオマケみたいな展示だけじゃもったいないですね。あんまりPRもされてないみたいだし。なんて贅沢な使い方なのでしょう。
一通り見学を終わって、お腹が空いたので一階のカフェレストラン「浪漫座」でランチをとることにしました。メニューは「シシリアンライス」にしましょう、佐賀に通い始めて2年以上になりますが実は初シシリアンライスなのですw
席に座って目の前には立派な暖炉。現在も使われてるみたい、シャレてるなぁ。貧乏でダサいオッサンと自覚のある私は、場違いなところに来てしまったのではないかと落ち着きません。
暖炉の上、煙突に掛けられたレトロな時計。「AICHI」と書いてありますね、これは愛知時計のしるし。
愛知時計は明治26年に創業した老舗メーカーで、ボンボン時計を作ったことで有名。海軍向けの精密機器製造に注力し、航空機開発を開始。後に愛知航空機が設立され航空機部門を分社し、日本を代表する航空機メーカーとなる。愛知製の主な航空機は九十九式艦爆や彗星、零式水上偵察機他を製造。極めつけは世界初の潜水母艦伊400型潜水艦に搭載された「晴嵐」も愛知製なんです。これ豆知識。
レトロな時計から凄い所に繋がってビックリしました。
そしてやってきたのはシシリアンライス。ライスの上に野菜サラダと肉がのったシンプルな料理。
浪漫座のシシリアンライスは肉にローストビーフを使用。
酸味の効いたドレッシングがご飯ともよく合う、なるほどご当地グルメとして有名になるのも納得。やっぱり佐賀は野菜が美味しい、これが産地で味わう野菜。味が、香りが、とにかく濃いんですよ。
今回お邪魔した旧古賀銀行を始め、佐賀歴史民俗館には旧長崎街道沿いにレトロで個性的な建物が立ち並んでいます。なんでもっとPRしないのか不思議なくらい、とっても見どころ満載の観光スポットです。おそらく佐賀市内で一番充実してるんじゃないでしょうか。
ただ全体的に地味というか寂しい場所ではあるんですよ、これだけ見事な建物が並んでるのに。
なんでだろうかと考えてみたら、古い建物を利用したテナントが全部室内に籠ってるんですよね。通りに面した扉を閉じてしまってるから、外から来る人を拒んでいるような閉鎖的な印象を受けます。今風のオシャレな店になっているのも冷たい雰囲気。もうちょっと通りに商品を出すなり、賑やかにすれば雰囲気も柔らかくなると思うんですけどね。営業してそうな店の中に入ってみようと思っても、扉の前に立つと開けるのに少し勇気がいります。
すっごくいい場所なんですけど、どこか排他的。時間帯で通行規制して路面店なんかも出せば、もっと明るく楽しそうな場所になると思うんですけどねぇ。
なんでも都会を意識してるのか綺麗にスマートにやろうとしすぎなんじゃないでしょうか、地方の取り組みってお行儀が良すぎる気がする。都会は儲けたもん勝ちですからね、下品だろうがなりふり構わずやれる事は全部やりますよ。すましたよそ行きの顔とがめつい本気の顔、その二面をもっています。特に地方の行政って都会の「よそ行きの顔」を意識しすぎなんじゃないでしょうか。
人気のない寂しい通り、開いてるのか閉まってるのか分からない店。いい意味で下品というか威勢のよさというか賑やかさというかね、そういう雰囲気があれば違うんじゃないかな。ここに楽市楽座みたいな常識や慣習をぶち壊すような取り組みとかあったら面白いかもしれません。と、歩いていて思いました。
ちょっとネガティブな事を書きましたが、そんなもの吹き飛ばすくらいに魅力的な場所なので行った事が無い人はぜひ行くべき。レトロな古い建物が好きならたまらない場所です。写真を撮るにも撮影スポットには事欠きません。
佐賀へ観光で行くなら真っ先におすすめしたい場所ですね。
「旧古賀銀行」
開館時間:9:00から17:00
休館日:月曜日※月曜日が国民の祝日の場合、翌日火曜日が休館。祝日の翌日※その日が土・日曜日の場合を除く。12月29日~1月3日の年末年始
※この記事は2015年4月16日に書いた記事を2017年6月29日に新しい写真を加えて書き直したものです。また、記事の内容は私が訪れたときのものであり、現状と内容が異なる場合があります。最新情報や詳細は公式サイトや直接問い合わせるなどで確認することをおすすめします。
佐賀市歴史民俗館公式サイト⇒https://sagarekimin.jimdo.com/
最新情報をお届けします
Twitter で佐賀ポータルをフォローしよう!
Follow @SagaPortalCopyright © 佐賀ポータル All rights reserved.