縄文時代早期の集落跡遺跡「東名(ひがしみょう)遺跡」の展示室。小さいけど見ごたえ十分です。
佐賀は歴史遺構の宝庫、有名な吉野ケ里や戦国時代の城跡など様々な遺構がそこら中にあるんです。ほんともうね、数えきれないくらい沢山ありすぎて見に行くのも大変なくらい。そんな数多ある佐賀の歴史遺構の中から、今回紹介するのは2016年に国指定の史跡となった東名遺跡。時代的には約8000年前の縄文時代早期にあった集落跡。今だにこんなすごい遺跡が見つかるなんて、ほんと凄い、さすが佐賀ですね。
で、この東名遺跡、古さもそうなのですが出土品がこれまた凄いんです。6カ所もある貝塚や、縄文人が身に着けていた装飾品、さらには草で編まれた「網かご」なんかも見つかっているんです。そんな全国的にも珍しい出土品を展示しているのが東名縄文館、調整池管理施設の一室に設けられた小さな展示館なんですけど見ごたえ十分。歴史好きならぜひ訪れてもらいたい施設なんですよ。
東名縄文館があるのは、佐賀県佐賀市金立町大字千布にある巨勢川調整池管理棟。
この管理棟の一室に「東名縄文館」があります。
管理棟の入り口から入ってスグ、1階に展示室がありました。
展示室に入ると、いきなり巨大な貝塚の展示。
これは実際の貝塚を固めて剥がしてきたもので、貝も土も全て実物。目の前に何千年も前の貝があるんです、すごいですよね。縄文人が実際に自分で採って、食べて、捨てた貝殻なんですよ。
数千年前のゴミが目の前に・・・こんな言い方したら微妙ですね。けど、8000年くらい前のゴミですよ。歴史のロマンを感じますねぇ。
貝塚の横には、貝殻や骨で作られた装飾品が展示されていました。
貝殻の腕輪や、穴をあけて紐を通したと思われるネックレス。そして、骨に模様を彫って、穴をあけ首から吊るしたのではないかとされる装身具。
とても細かい模様が刻まれています。縄文時代の人が手で彫った模様、こういう物を作る職人さんがいたんでしょうか。腕輪にネックレス、ペンダント。こういったアクセサリーは、使う素材や加工技術が変わっただけで数千年前から同じなんです。
こちらは貝塚から見つかった貝。他にも鹿やイノシシ、犬、スッポンの骨、ムツゴロウの骨なども出土したそうです。
東名遺跡を紹介するパネルもありました。この場所は約8000年前の海岸線に近く、大きな川沿いでした。東名遺跡があったころの海岸線を示す地図。東名遺跡から少し東に行くと吉野ケ里があり、同じく海の近くだったことが分かります。
巨勢川調整池全体の写真に、貝塚の場所を表示した写真。
発掘の様子を紹介する写真。
更に奥へと進んでいくと、土器の展示がありました。
扁平な石皿と、丸い石はドングリなどをすりつぶす調理器具。石でできたナイフのようなものや矢じりなどの石器、出土した網かごも展示されていました。
網かごの出土状況を解説するパネル。網かごは川のほとりに掘られた貯蔵穴に入っていたそうです。川のほとりの穴に網かごを入れ、食料などを水に漬けて冷蔵庫のように使ってました。
すごいですね、このころから食料を冷やして貯蔵していたんです。
こちらは大型の網かご。大きさも様々あったようで、網かごの部位によって編み方が違うんです。真ん中の少し上には模様も編み込まれていて、飾りや目印だったのではないかとされています。
この遺跡の凄い所は、網かごや木製品といった腐敗しやすい道具類が出土している事なんです。この木でできた匙なんて、今でも同じようなものがありそうですよ。
木でできた皿もありました。
こちらは堀り棒という、穴を掘る道具。
なんと!櫛までありますよ。縄文時代の人も身だしなみを整えていたんですね、これはスゴイ。よく残っていましたね。
更にその横には縄があります。
他にも、草などの素材を束にしたものがあります。網かごや縄の材料でしょうか。
この他にも様々な展示があるのですが、この「東名縄文館」を見学して縄文人の生活というのを強く感じました。なんというんでしょう、展示物に生活感があるんです。その昔、私たちの遠い祖先ともいえる人々が、この地で生活していたという事実をリアルに感じる事が出来る素晴らしい展示館ですよ、マジで。
今まで縄文時代の人々は、原始的な生活から少しずつ文明的な生活へと移行する過程の人達くらいの感覚でした。しかし、アクセサリーを身に着けてオシャレをしたり、櫛で身だしなみを整えたり、食料を冷やして保管したり、調理器具で料理を作ったりと、現代の生活と共通する習慣が縄文時代にはすでにあったんです。こういった生活に密着した出土品の数々を見ると、縄文の人たちをとても身近に感じる事が出来ますよね。
本当に小さな展示館なんですけど、とにかく展示の内容が素晴らしい。歴史好きの人なら、一見の価値あり。是非おおススメしたい。
あと、無料で配布されている冊子もいいですよ、内容がかなり充実しています。
こういった発掘状況や出土状況を写真で詳しく解説してあったり
出土品がどのように使われていたのかといった解説があります。全16ページの中で、写真を豊富に使った読み物がとても充実るんです。
この冊子を見ながら見学したり、家に帰ってから開いてみる事で更に理解を深めたり、当時の人たちの生活を身近にイメージするためのツールとして読み応え十分。
そして、東名縄文館を見学して外に出てみると、目の前に広がるのは佐賀の広大な景色。佐賀って、陸地だけじゃなく空も広いんです。
ちょうこの池の先が今回紹介した遺跡、縄文時代の集落があった場所。
神崎でしたっけ、史跡の案内看板に「屋根のない博物館」と書いてあったのは。佐賀に通うようになって思うのは、本当に言葉通り佐賀平野から背振山系まで全てが博物館みたいな場所だということ。数えきれないほどの歴史遺構が各所に残っています。
けどね、なぜか面白い歴史遺構って、あまり注目を集めていない場所が多いんです。そして、歴史を紹介する資料館が非常に少ない。メッチャもったいないですよね。
特に残念なのは、佐賀の龍造隆信関連の情報が少ない事ですよ。佐賀の各所に戦国時代の城跡や合戦場などがあるにもかかわらず、あまりにも龍造寺・少弐時代の展示が少ない。佐賀の中世・近代史で、一番ドラマチックな時代なのに・・・
佐賀で龍造寺はタブーなんでしょうか。幕末は・・・ちょっと、佐賀は違うかな。佐賀の乱は非常に興味深いですが。
まあ、いずれにしても、佐賀は歴史遺構がとても多い、このことは間違いないし。もっと多くの人にこの素晴らしい「屋根のない博物館」を知ってもらいたいでよね。そんな佐賀の歴史遺構を、少しでも多く紹介できるように微力ながら頑張っていきたいと思います。それと、もう少し小さくていいので、資料館を増やしてほしいです。ココみたいに何かの施設の一室でいいので・・・公民館とか、上手く利用できないのでしょうか。
「東名縄文館」
開館時間:火~日 10:00から16:00
休館日:月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は翌日)
最新情報、お問い合わせ、詳しくは下記リンクから佐賀市ウェブサイトをご覧下さい。
佐賀市公式サイト東名縄文館のご案内⇒https://www.city.saga.lg.jp/main/813.html
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