「アニメにはまちおこしの力なんてない」とってもいい記事。地域活性化のヒントだらけです。

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アニメやゲームのキャラで町おこししましょうなんて甘い話はないんですよ。せいぜい、お祭りが精いっぱいです。

8月6日の「ASCII.jp」にとってもいい記事が載っていて、思わず「その通り!」と手を打ってしまったので、その勢いのままコラムなんて書いてしまいます。

この記事を書くきっかけになったのは、あの「ガールズ&パンツァー」プロデューサー杉山氏のインタビュー記事。タイトルの「アニメにはまちおこしの力なんてない」はその文中で語られた言葉なんです。この言葉を聞いて、町おこし担当の方は「えっ?」と思ったんじゃないでしょうか。

「ガールズ&パンツァー」は戦車道というスポーツを通じて、高校生が成長していく姿を描いた青春スポーツアニメ。オタク層を中心に大ヒットし、社会現象にもなりました。マスコミにも頻繁に取り上げられていたので、聞いたことがある人も多いはず。

このアニメの舞台となった「茨城県大洗町」は日々多くのファンが訪れ、地域の人たちのと交流が生まれていくという理想的な「まちおこし」事例として語られることが多いんです。なのに、その中心人物であるプロデューサーが「アニメ」と「まちおこし」の相関関係を否定するというのはどういう事なんでしょう。

基本的にわたしは(アニメ)コンテンツでまちおこしとか地域復興はできない、と思っています。なぜかというと、普通に考えればよくわかるんですが、たとえば深夜枠のアニメーションって(放送は)夜中の2時とか3時じゃないですか。視聴者層がものすごくセグメントされています。ほとんど男性のアニメマニアしかいないわけです。

記事中より抜粋

まず結論から言うと、今回のアニメ「ガルパン」と「大洗町」がお互いに良い関係を築き、相乗効果によって「まちおこし」に繋がったのは、アニメの力ではなく「地域の観光力」が非常に大きかった。そして「ガルパン」のファン層が30代後半でマナーが良く、社会人中心の「大人のオタク」であったために「自分たちが地域の人からどうみられているか」を意識した行動をとった。

その結果として相互理解が進み、文字通りの相乗効果を生むことに成功した。そして、切っ掛けはアニメでも大洗を気に入った人たちが頻繁に通いだし、おおきな輪が広がっていった。という事のようです。

大洗海岸(朝焼け)

大洗海岸(朝焼け)

そもそも、茨城県大洗町という場所は県内でも有数の観光地であり、2010年時点での町内人口約18000人に対して約560万人もの観光客が訪れる地です。これだけの観光客が来るという事は、地域に人を集めるだけの魅力が備わっていたんですね。そう、ガルパンがなくても、立派に観光地としてやっていた町なんです。そのため、観光客を受け入れてもてなすという事が、日常から当たり前であった。そこに非常に質の良い新しい客層が増えたのですから、地元の観光業界が歓迎しないわけがありません。

しかし、地元の住人にはアニメファンに対する警戒が少なからずあったとか。それを乗り越える事が出来たのは、やってきた観光客のマナー。これが非常に大きかったそうです。そう、誰でも来てくれれば良いというわけではないんですよね。

今回は、意図せずガルパンのターゲットとなった層が地元でも受け入れやすい人たちだった。なので、地域が一丸となって歓迎することができるようになったそうです。これが学生などの若者だったら、こう上手くはいかなかっただろうとインタビューの中でも語られています。

そして、大洗という場所を知らなかった観光客が、アニメが切っ掛けとはいえ観光力の強い魅力ある場所と出会い、観光客に慣れている地域の人たちによるもてなしを受けた。結果、とても良い場所だという口コミが広がり、さらに常連化して何度も通うようになった。

もともと観光地だからという面はすごくあると思うんです。お客さんとの交流に慣れているんですよ。賀詞交換会でスピーチをさせていただいた際、「このポテンシャルの高さというのは他にはないと思います。そこはもっと自信をもってください」という話をしたんですね。

たぶん、おカネにならなくてもファンを歓待するというのは、目の前の利益じゃなくて、町や店を好きになってもらうほうが先……といった商売人ならではの嗅覚が働いているのかもしれないと思っています。

記事中より抜粋

実に分かりやすいですね。

更に、杉山氏はこうも言っています。

よくコンサルの人たちが“コンテンツツーリズム”って言いますが、後付けならわかりますけれど、コンテンツツーリズムを前提に、行政を巻き込むのは(わたしは)すごく反対なんです。

記事中より抜粋。

そりゃそうですよね、アニメを作る側としては「いいコンテンツを作る」ことが仕事なのですから、アニメがヒットして舞台となった場所にファンが訪れるという効果は生み出せるかもしれません。しかし、そこから先、コンテンツ制作サイドからできることなんて何もありません。一時的なもので終わってしまう可能性のほうが高いわけで、地域を良くする保証なんて出来るはずがありません。また、地域を前面に押し出すことが目的になって、コンテンツの内容が面白くなくなれば本末転倒で全く意味がないわけです。

結局のところ、アニメを使って「まちおこし」をするのは、アニメ制作サイドなどではなく「舞台となった地域」が観光客をひきつけファン化できるだけの魅力と力を持っているかどうかにかかっているんですよ。

外部から持ってきたアニメは切っ掛けであって、地域振興の成否を分けるのは地域内部の問題なんです。

大洗の海鮮市場

大洗の海鮮市場

これなんかも象徴的ですよ。

大洗に行って、実際に商品を手に取ってみるとわかりますが、ほとんどロイヤリティーが乗っていないような金額で商品が販売されています。そんな商売っ気のなさがファンに受け入れられた――つまり『俺たちをカモにしようとしている』と思った途端にファンは一気に離れるんですけれど、逆に「こんな値段でいいの?」という声が多かったんですよ。

中略

キャラクターを載せて値段を上げるという商売をしがちじゃないですか。ですが大洗は食べ物も含めてものすごく物価が安い。その上に(ライセンス料が)載っかっても、それこそデザインを変更した包み紙の実費分くらいしか上がってないんです。

中略

社会で仕事をしている人たちが中心なので、原価というものに理解があるわけです。だから「えっ! こんな安くていいんですか?」となる。この人たちは儲ける気がないのかもしれない(笑)という風に理解してくれたのだと思います。これが高校生とか大学生とか、社会に出ていない子たちが中心の作品だったら、たぶんこうはならなかったでしょう。

記事中より抜粋

地元のホスピタリティ溢れる対応が生んだファンとの交流の話も、なるほど~と思わされます。

おもてなしとか言いながら、ニコニコ愛想よくするからお金落としてねって・・・笑顔の目が円マークになってるケースが多いんですよ最近。客からすると、そういう空気は敏感に察知します。それって、もてなしじゃなくて「営業」でしょって突っ込みたくなくなる。もてなしって、基本的に相手に対する思いやりからくる無償の行為でしょ。家に来た客に、寿司とったから金よこせって言いませんよね。

典型的な例がウスヤさん(ウスヤ精肉店)という、劇中にも登場する串カツを売っているお店です。最近は大晦日にガルパンファンが、磯前神社で初日の出を見ようということで夜明かしをするんですね。年末の海のそばだからものすごく寒い。そうしたらウスヤさんは朝の5時まで店を開けてくださったんです。ファンが暖まれるようにって。串カツも売るんですが、一緒に甘酒を振る舞っちゃうんですよね。

―― 無料で……。

それ、下手をすると赤字でしょ、と。でもそれをやる人たちなんですよ。誰から頼まれるでもなく、自分たちでやり始める。そういうことをしてくれる町だからこそ、「ガルパンがきっかけだけど、大洗が好きで、どこそこの商店のおばちゃんに会いに来ました」って、ファンが手土産持っていくわけですよ。

記事中より抜粋

以上のことからも分かるとおり、いくら流行りのアニメやドラマ、映画なんかを誘致したところで地域にそれを生かせる力がなければ、何の意味ももたない。切っ掛けがあれば、それが何であれ生かして新しいファンを獲得していく適応力と行動力がなければならないという事なんです。そのためにはまず「地域の人たちの心が目的のために纏まっているか」というのが重要で、この後の話では宿泊施設が足りない状態になった時に、町営施設を開放すると共に商船三井フェリーの「さんふらわあだいせつ」をホテルとして稼働させたという話が出てきます。

まさに官民一体、まるで災害対応のようなことをやってるんですよ、たかがアニメファンのイベントのために。これは、アニメファンとしては嬉しいですよね、ここまでしてくれるのかって感動しますよ普通の人なら。

大洗フェリー

大洗フェリー

他にも深夜から早朝にかけて町運営の施設をシェルターとして開放し、利用できるように職員が朝5時に来て暖房を入れるとか・・・明らかに通常の勤務形態から逸脱したり、早朝から地元交通会社が駅とのピストン輸送をしたりとか、地元企業まで巻き込んでファンのために様々な事をやってしまう。普通なら無理だろうという事を実現してしまう行政や商工会の行動力。やはりそこは、有名観光地として培ってきた経験や、宿泊施設や交通関連企業との信頼関係・協力体制が最大限に生かされているのでしょう。

そして最後にこう締めくくっています。

アニメが持っているものはそこ(地域振興)じゃなくて、訴えたいことをきちんと伝えて感動してもらったり怒ってもらったり……物語そのものから何かを受け取ってもらう、そのための表現媒体としての力はもちろんあると思っているんですけれど、町を興すことについては、アニメの持っている力とは違うと思うので。そんな力はない、というのはそういうことなんです。

記事中より抜粋

イベントにしても、アニメにしても、何でもそうなんですけど、地域の名前を知ってもらい人を集めるという事は、良くも悪くも地域の事を知られるわけです。そこで受け入れる側が来た人の予想を上回るような対応が出来なければ、ファンになるどころか「あそこ行ったけど、全然たいしたことないな」と評価を下げてしまう事にもなるんです。

イベントばかりに頼ったり、アニメやゲームとのコラボは有名だけど一向に地域振興の兆しが見えない地域は、そもそも地域内部に問題を抱えているか、観光地にむいていないんです。

これからも各地で様々なアニメなどのコンテンツとのコラボイベントや、ゆかりの地として町おこしに活用しようという動きが出てくるでしょう。しかし、そういった外からの切っ掛けを利用したPRが実を結ぶかどうかは、結局のところ地域の観光地としての実力にかかっているんですね。

元記事:ガルパン杉山P「アニメにはまちおこしの力なんてない」

記事内の写真:茨城県観光公式サイト「観光いばらき」内のフリー画像

 

 

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コウテツタクヤ編集長

投稿者プロフィール

非正規社員で非正規農家、非正規ウェブメディアの自称編集長と、もはや存在自体が非正規じゃないかと心配しながら暮らす”負け犬”ダメ中年。
起業に3回失敗しながら、全く懲りない永遠のチャレンジャー。

いつの日か、負け犬からハイエナに進化できる日を夢見ています。

大阪で生まれ、兵庫のベッドタウンで育ち、航空自衛隊に7年間勤務したのち就職。転勤族として全国を転々としながら時どき起業して失敗。その都度転職を繰り返し、気が付いたら福岡の片隅に流れ着いておりました。

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