大川内山は佐賀鍋島藩の厳重な監視下におかれた秘密の集落だったそうです。
最高品質の伊万里焼「鍋島焼」を生み出した伊万里市の「大川内山」は江戸時代の面影を残す素敵な集落でした。
伊万里焼とは、伊万里だけでなく有田や武雄、嬉野など肥前産の磁器を指していたんです。現伊万里市の伊万里港から積み出された磁器を伊万里と呼び、伊万里市にある有名な焼き物の里「大川内山」で作られていた焼物は「鍋島」と言われる将軍家や大名などに送られる最高品質の磁器。つまり、特別仕様の磁器を作っていた場所なのだそうです。
今回紹介する「大川内山」は佐賀鍋島藩が優れた技術者を集めて開いた集落で、出入り口には関所が設けられ一般人の出入りは厳しく制限された場所でした。実際に集落を抜け出した人が執拗な追跡を受けて他国でとらえられ、斬首されたという逸話も伝わっているほどです。現在は集落一帯が国の史跡に指定され、江戸時代の面影を残す窯元の里として人気の観光スポットになっています。
ここが大川内山の入口、江戸時代の関所をイメージしています。
再現された白壁から中に入っていくと、水の力を利用して陶石を砕いて粉状にする様子が再現されていました。
シーソーのような構造になっていて、水の重さを利用して杵をつくような感じですね。陶器と磁器の違いは、陶器は土を練って作るのに対して磁器は石を砕いた粉で作られます。ここで石を砕いているという事は、鍋島焼を含む伊万里焼は磁器という事ですね。
いきなり歴史を感じるアトラクションからスタートして、そこから続く川のほとりに整備された綺麗な遊歩道を歩いて行きます。
期待に胸を膨らませながら順路を進んでいくと、陶工たちの墓がありました。江戸時代の陶工たち880基の無縁墓標で作られた供養塔。出入りも厳しく規制され、技術の秘匿を命じられた人々によって生み出され、受け継がれてきた焼物の里。歴史の重さを感じる場所ですね。
供養塔に参ってから遊歩道を歩き、大川内山のメインストリート「鍋島藩窯坂」へとやってきました。正面に見えるのは伊万里鍋島焼き会館。多くの窯元の作品を展示販売する施設で、カフェも備える観光の拠点施設です。観光マップもここで手に入ります。
片岡鶴太郎さんのアトリエもあるという大川内山のメインストリート、いきなり二股に別れているので左側の少し狭い道を進んでいきます。
ここは江戸時代の関所跡。ここから先は、一般人の立ち入りが禁止されていました。
メインストリートもですが、古い街並みの路地裏に注目。ノスタルジーを感じる素晴らしい路地裏っぷりです。
おぉっ!この建物が素晴らしいですね、シンプルかつ重厚な雰囲気。古いようで新しいようで、とてもモダンな建物。入口に比較的近い場所に建つ「太一郎窯」さんです。
参考:太一郎窯公式サイト
中をのぞいてみると窯とベンチ、う~んと見る人が唸ってしまうセンスが光ります。
ここには目立つ煙突が目印の「せいら」さんがあります。ココから道を直進すると鍋島藩の御用窯跡や、大川内山の氏神様を祀っている岩をくりぬいて作った神秘的な神社「権現岳神社」へと続きます。
大川内山の観光ストリート、窯元が数多く立ち並ぶ鍋島藩窯坂は右に曲がります。
色んな窯元が並んでいるんですが、私のような貧乏人には少し敷居が高い。なんというか、中に入るのをためらってしまうんです。しかし、そうも言ってられないので、比較的入り易そうな窯元を見学してみましょう。
ここは虎仙窯、女性の伝統工芸士がいる事で有名な窯です。
参考:虎仙窯公式サイト
うわぁ~、品のある店内。美しい器が沢山陳列されています。
綺麗な色ですね、こういう器に盛ると料理も美味しくなりますよ。
青磁というんでしょうか、う~ん、一つ欲しくなるけど…一つじゃ使い道がないですよね。我が家の器はニトリとダイソー、たまにセリアなので合わせる器が無いですよ。あ、波佐見焼の「くらわんか椀」があったけど、ちょっと違いますよね。
もう一軒立ち寄ってみると、とても素敵なギャラリーみたいになっていました。
という事で、再び散策開始。
これはまた、味のある建物です。
後ろを振り返ってみると歴史を感じる古い街並み、日本情緒を感じる通りが続いていました。
なぜか大川内山に加藤清正公を祀るお堂が。
扉を開けてお参りさせて頂きました。
この清正公堂へと続く道も、とても味があるといいますか…飾らない、昔のままの姿といった感じです。癒されます。
うわぁ~、これイイ!水道が無かった時代はこういう水を利用していたんでしょう。野菜や食器を洗ったりしていたんでしょうか、生まれた時から水道水で育った私には推測しかできません。
この先には大川内山の政務を行った役所「藩役宅」跡があるようです。
役宅跡は広場になっていて、パッとみて分かるような遺構はありませんでした。奥に見えているのが清正公堂で、お堂の左側に焼物倉、右側に米倉があったそうです。
この石垣と路地もいいですね~。綺麗に整備された場所よりも、こういう場所に惹かれてしまいます。
役宅跡から坂を下って通りに戻ると、喫茶店があり藩窯公園への入口になっています。ちょうどここが大川内山観光ストリートの終点です。
登ってきた坂を見下ろすとこんな感じ。けっこう上まで来てますよ。
鍋島藩窯公園は集落の中を流れる川を渡って対岸の地区です。陶工の家を再現した建物や、古い窯跡などの見どころがあるので次回の記事で紹介します。
流石に江戸時代の姿そのままとはいきませんが、藩が秘匿した特殊な集落としての雰囲気は十分味わえる場所です。中世日本の面影を残す町並みは、日本人の美意識にマッチした日本情緒の塊のような風景。
なぜなんでしょうね、近代的になった後の日本で生まれ育ったはずの私ですが、中世日本的な場所に行くとなぜか懐かしく感じてしまうんです。不思議ですね。
ということで、焼き物好きはもちろん、焼き物にさほど興味はないという方でも訪れる価値のある場所ですよ。古い街並みを売りにしている場所は沢山ありますが、これほどの規模で昔の面影とストーリーを持っている場所はなかなかありません。
今回の記事で紹介しきれなかった「鍋島藩窯公園」は、またの機会に。
「伊万里秘窯の里 大川内山」
MAP:佐賀県伊万里市大川内町乙1848 Googleマップへ
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